吉行淳之介短編集: Toward Dusk

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Toward Dusk and Other Stories by Yoshiyuki Junnosuke

吉行淳之介


選定・翻訳
Andrew CLARE


序文: James DORSEY



1978年に国内でも最高峰の文学におくられる野間文芸賞を受賞した『夕暮まで』の初の英訳。吉行の連作小説の中でも、珠玉の作品と言われる。本書は『夕暮まで』のほかに、選り抜きの短編も収録した。収録作品はすべて初の英訳となる。
『夕暮まで』は、主人公の中年男・佐々の周りで起こる物語。彼は処女性に固執し、愛人・杉子の純潔を執拗に追い求める。

この作品のテーマは、谷崎潤一郎賞を受賞し、ジョン・ベスターにより英訳もされた『暗室』と類似している。批評家ジェイムズ・カーカップは、次のように指摘する。「戦後の希望を見出せない風潮の中、吉行は男女の関係はもろく、頼りがいがなく、はかなく、でたらめなものであると感じた」『暗室』の中田同様、佐々は逢い引きに心を砕く。中田とは違って若い妻がいるのだが、家庭は空虚で、ただ愛人と逢わないときに帰るだけの場所であった。佐々は杉子との関係を、一時的な、いつでも解消できるものにしておきたいと自分の都合のよいものにする。だが、最終的にお互い違う道を歩きださねばならず、永遠に続くものはないと気がつく。

多くの官能的な作品を残した吉行淳之介の文体は、谷崎潤一郎や永井荷風を彷彿とさせる。吉行の作品は、男女間における精神の純潔の模索をテーマとし、その男女関係は、主人公の男と娼婦の場合が多い。

New Writing in Japanの序文で、三島由紀夫はこう述べる。「吉行の言葉や感性に現れる繊細さは、戦後日本のどの作家よりもかすかで読みとりにくく、それでいて洗練されている。今日の日本の若者が持つ先入観――愛とは不可能で実行できない――が吉行の思考の根底にある」また、吉行の優雅な散文体は、不条理文学の代表者フランスのアルベール・カミュの文体を彷彿とさせ、ハーバード大学名誉教授・日本文学研究者のハワード・ヒベット氏はContemporary Japanese Literature: an Anthology of Fiction, Film and Other Writing Since 1945で「吉行の小説の表面ににじみ出るセンスや洗練さは、複雑で軽薄な、そして無益なこの世界を実によく表現する。辛辣な文体に宿る都会的な洗練さは称賛されるべきである」と賛辞をおくる。

目次

  • Toward Dusk (夕暮まで)
  • Straw Wedding Anniversary (藁婚式)
  • At the Aquarium (水族館にて)
  • Treatment (治療)
  • Burning Dolls (人形を焼く)
  • Midnight Stroll (深夜の散歩)
  • Flowers (花束)
  • The Molester (痴)
  • Voice of Spring (春の声)
  • A Bad Summer (悪い夏 )
  • Treatment (治療 )

書籍データ

  • ページ数: 未定
  • 新書判 127mm x 203mm (5" x 8") 
  • ISBN-10: 4-902075-17-2
  • ISBN-13: 978-4-902075-17-5
  • 黒田藩プレスID: FG-JP0026-L32
  • 定価: 未定
  • 表紙絵: 『日月櫻図宵』 智内兄助

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著作者

吉行淳之介(よしゆき じゅんのすけ)

1924年誕生。1945年東京大学英文科入学。1949年に最初の小説『薔薇販売人』を出版。1952年『原色の街』が芥川賞にノミネート。その他、芥川賞を受賞した『驟雨』や、文化庁芸術選奨で最優秀賞を受賞した『星と月は天の穴』などがある。1970年に発表され、谷崎潤一郎賞を受賞した『暗室』は、彼の作品中で初めて英語に翻訳された。吉行自身もヘンリー・ミラーのNights of Love and LaughterInsomnia or The Devil at Largeの翻訳をてがけた。


翻訳者

Andrew Clare (アンドリュー・クレア)
イギリス・マンチェスター近郊在住。シェフィールド大学で日本学の学位、神戸大学で政治学修士号取得。法律事務所の共同経営者も務める。現代小説家の中では、永井荷風、小林多喜二や遠藤周作などを好む。松本清張の『霧の旗』を英訳(Pro Bono, Vertical社)。その他、清張の短編など翻訳書多数。


序文の著作者: James Dorsey(ジェームズ・ドーシー)

アメリカ、ダートマス大学准教授。日本文学、日本文化、日本語を教える。著書に Critical Aesthetics: Kobayashi Hideo, Modernity, and Wartime Japan (Harvard University Asia Center, 2009)。また、随筆二編と翻訳四編を含む Literary Mischief: Sakaguchi Ango, Culture, and the War (Lexington Books, 2010) をDoug Slaymaker氏と共同編集。現在、ふたつの研究プロジェクト—〈戦時中の日本における1941年12月真珠湾攻撃の描写〉〈1960年代後半の日本における政治とフォークソングの考察〉—に取り組む。趣味は習得した合気道とサイクリング。余暇には、東京の路地やニューハンプシャーの丘陵地帯でサイクリングを楽しむ。


表紙:智内兄助(ちない きょうすけ)

1948年愛媛に生まれる。1966年今治西高等学校卒業。東京芸術大学へ進学。1988年日本青年画家展賞、1991年安井賞など、数々のコンクールで受賞。1981年より、アメリカのクリーブランド・ビエンナーレ展や、上野の森美術館大賞展、安井賞展などのグループ展に出展。1983年からは由緒ある会場で個展を開催するなど、精力的に活動を続ける。2003年には東京セントラル美術館や、喜多方市美術館、久万美術館、なかた美術館での個展、2007年には高島屋や愛媛県美術館での個展を開き、25,000人が訪れた。2000年には、パリ支店を持つ〝ギャルリーためなが〟と契約し、2002年、2004年とパリで個展を開催、活動の舞台を世界に広げる。作品は、愛知、今治、埼玉、刈谷など国内の美術館のみならず、アリアン・ドゥ・ロスチャイルド男爵夫人の個人コレクションにも多数所蔵されている。本作の表紙は『日月櫻図宵』より。

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