お伽草子・太宰 治

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Otogizōshi: The Fairy Tale Book of Dazai Osamu


太宰 治
翻訳 Ralph F. MCCARTHY


序文 Joel Cohn

桃太郎、カチカチ山、舌切り雀、瘤取り、浦島さんなど、ある父親がむかしむかしの話を子どもたちに聞かせる太宰治の『お伽草子』。父親の身なりはみすぼらしく、賢そうには見えないが、話を作り上げることにおいては非凡な才能を持っていた。
むかしむかし、あるところに......奇妙な、鈍い声で絵本を読みあげると、父親の中で熱のこもった話が湧きあがってくる。

太宰治が『お伽草子』を書いたのは、終戦前の数ヶ月である。太宰が語った昔話は、日本の子どもたちなら誰でもが知っている話をベースにしているものの、子ども向けの話ではない。太宰の筆にかかれば、心優しいおじいさん、おばあさん、いたずら好きのたぬき、恐ろしい鬼、欲深い老人、舌を切られた雀、浦島太郎といったお決まりの主人公たちが、解決困難な何とも言い難いモラルのジレンマに陥る複雑な登場人物となって姿を現す。結果として、おおいに読者の思考力を刺激し、意地悪くも考え方を破壊させ、同時に感服させる。親しみある昔話と太宰のウィットの効いたコラボレーションを、英文という違った角度から読むことのできる作品である。


書籍データ

  • ページ数: xv + 125
  • 新書判 127mm x 203mm (5 x 8)
  • ISBN-13: 978-4-902075-40-3
  • 黒田藩プレスID: FG-JP0030-L38
  • 定価: US$9.00
  • 表紙絵: 月岡芳年


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著作者

太宰 治 (1909–1948)
20世紀の日本における最高峰の作家のひとり。皮肉さや陰鬱さの中からにじみ出すウィットを得意とした。1947年出版の『斜陽』では、第二次大戦後の日本貴族の没落を鮮やかに描き出し、一躍有名人となった。ベースとなったのは、恋人だった太田静子の日記で、彼女は後に1947年に太宰の娘・治子を産んでいる。
『斜陽』や『人間失格』の書評では〝陰鬱で破滅的〟と評されることも多いが、太宰の切り口の鋭いウィットや、ふんだんに盛り込まれたユーモアが作品全体を通して迫りくる。痛いほどぶっきらぼうで現実的な言葉を用いて人間を描き出す彼の作品には、人生そのものと同じように、ふと微笑む瞬間が混じっている。


翻訳者 
Ralph F. McCarthy (ラルフ・F・マッカーシー)

南カリフォルニア在住。太宰の作品を集めた翻訳書にSelf PortraitsBlue Bambooがある。その他、村上龍の翻訳In the Miso Soup(『イン ザ・ミソスープ』)やPopular Hits of the Showa Era(『昭和歌謡大全集』)多数。最近の翻訳に、Infinity Net: The Autobiography of Yayoi Kusama(『無限の網――草間弥生自伝』)がある。


序文の著作者 Joel Cohn (ジョエル・コーン)

ハワイ大学マノア校、日本文学准教授。東アジア言語文学科前学科長。18世紀から20世紀にかけての日本文学の翻訳に携わる。『坊っちゃん』(夏目漱石・1906)の翻訳Botchanで日米友好基金日本文学翻訳賞を受賞。その他の著書に、Studies in the Comic Spirit in Modern Japanese Fiction (Harvard University Asia Center, 1998)がある。

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