幻の光・宮本 輝

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Phantom Lights and Other Stories


宮本 輝
翻訳 Roger K. Thomas

本書の新しいコレクションには、宮本輝の永遠のテーマが盛り込まれている。表裏一体となった生と死とは何か、生きる意思や、宿命といったテーマが、ユーモアを交えつつ、切々と語られ、形をもってくる。主人公たちは、過去や、他人との厳しい関係に気持ちの整理をつけようと必死にもがく。死、病気、喪失という辛い設定のなかでも、大きな喜びを感じ、望みをつなぐ。作家が描く悲劇さえも、ときに登場人物たち自身が前進する足掛かりとなる。宮本氏は子ども時代の記憶をベースに、世界的に有名な大阪・神戸の街を舞台として、見事な手法で何重にも深みのあるストーリーを展開する。

日本で多数の熱狂的なファンを持つ宮本氏の作品は、多言語に翻訳されることで、アジア諸国やヨーロッパでも着実にファンを増やしている。ただ、現在英語で読める小説は3作品にとどまっており、文学における〝輝現象〟を世界のほとんどの人は知らない。今回のコレクションの目的は、その隙間を埋めることにある。収録したのは、最も評価の高い中編である『幻の光』と、えりすぐりの短編7編。『幻の光』は1995年に是枝裕和監督の手により映画化され、国内外で高い評価を得ている。

ワシントンタイムズのライターであるアンナ・チェインバーズがKinshu: Autumn Brocade (『錦繍』)のレビューで寄せたコメントが、今回のコレクションにも言える。「存在の危機後の存在の危機のせいで、主人公たちは西洋で言う魂を形成するというよりも、自分の宿命を自らの手で作り上げることができるだろうかと悩み苦しむ。単なる日本文化の観察者では終わらない、西洋人の入門書となるだろう」こう評された『錦繍』と同じく、今回の収録作品も、現代と伝統のはざまで宿命に立ち向かうことの意味を、前向きな姿勢で教えてくれる。

宮本の作品は、故郷である関西地方の風景を使ったり、舞台としたりすることが多く、関西方言が使われている。荒廃した土地で、戦後日本の高度成長期や、予期せぬ人生の変化や、愛する人の死によって、主人公たちは文字通り「取り残される」。宮本が描く主人公たちは一般市民だが、高みを見たいと望み、生きることにもがき、最終的にひそかに勝利する人たちなのである。地方色豊かな宮本氏の作品が英語でどう訳されるかも見どころのひとつである。


目次

  • Phantom Lights (幻の光)
  • Eyebrow Pencil (眉墨)
  • Strength (力)
  • The Lift (五千回の生死)
  • Vengeance (復讐)
  • The Stairs (階段)
  • A Tale of Tomatoes (トマトの話)
  • Evening Cherry Blossoms (夜桜)

書籍データ

  • ページ数: xix + 158
  • 新書判 127mm x 203mm (5 x 8)
  • ISBN: 978-4-902075-42-7
  • 黒田藩プレスID: FG-JP0033-L40
  • 定価:US$13.00
  • 表紙絵: 行武 理加

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著作者

宮本 輝
1947年神戸生まれ。追手門学院大学卒業。日本を代表する作家であり、各国の言語に翻訳されるなど国外での評価も高い。『錦繍』は2005年に英訳された。特に、生まれ育った大阪・神戸の労働者階級をモチーフにしたストーリーや、自叙伝的なエピソードからヒントを得た作品では、彼の才能が余すところなく発揮される。ファンも多数で、『蛍川』で芥川賞を受賞するなど、数々の賞に輝く。


翻訳者

Roger K. Thomas (ロジャー・K・トマス)
イリノイ州立大学教授。東アジア研究のコースリーダー。東アジアの言語や文学を教える。近代詩や国学の研究のほか、現代フィクションにも強い関心を持つ。翻訳書にKinshu: Autumn Brocade (『錦繍』)その他。

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